検事長による賭け麻雀について刑罰を科す必要はあるのか 比較

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東京高等検察庁の黒川弘務検事長が、賭け麻雀を行っていたことが明らかとなり、黒川氏は辞職することとなりました。検察庁法の改正が見送られたことで、法解釈の変更と言う方法で既に定年を延長されていた黒川氏の存在は浮いたものとなってしまっていましたから、黒川氏を検事総長に就任させようとしていた組織から切り捨てられてしまったのではないかと邪推してしまう方も多いように思います。  世論の中には、黒川氏の処罰を求める声もあるようですが、賭け麻雀については、それを主題とする映画や漫画等も世の中には多数存在しており、高度の違法性を孕む行為とは認識されていなかったのではないかと感じています。  一方で、刑法には賭博を罪とする条文も定められていますから、賭博はれっきとした犯罪行為といえます。  今回は賭博罪について解説することで、賭博罪の違法性や刑罰を科す必要性等について明らかにしたいと思います。 このように、刑法は単純に「賭博」という行為を犯罪行為として定めており、一時の娯楽に供する物を賭けた場合には、刑罰を科さない旨を定めています。そこで、「賭博」の定義と、どこまでの範囲であれば、「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまる」と評価されるのかが問題となるのです。  また、刑法以外にも賭博に関する罪を定めている法律として、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律第3条5号等がありますが、この法律も刑法上の賭博罪に該当することを前提に、その罪の重さを加重する旨を規定するに過ぎません。 まず、「賭博」の定義について確認します。  「賭博」とは、偶然の事象に関して財物を賭け、勝敗を争うことを意味するものと解されています。  そして、その偶然性の大小は「賭博」の該当性に影響を及ぼさないものと考えられています。例えば、麻雀については、昭和時代の古い判例によって、金銭等を賭けて勝負した場合には、「賭博」に該当する旨が判断されていますが、麻雀にもプロリーグがあるように、単純に運の世界の勝負ではなく、実力差があるはずです。しかしながら、プロの麻雀士と麻雀の素人との間の勝負だからと言って、「賭博」に該当しないということにはならない訳です。  逆に、そのような勝負事に関してイカサマが行われているような場合、その勝負には偶然性がないことになります。そうすると、イカサマが行われている麻雀については、イカサマを行っている者に対して詐欺罪等が成立し、イカサマをされた者に対しては賭博罪は成立しないことになるのです。  ここで、接待麻雀について考えてみましょう。接待麻雀において、接待される側が必ず勝つような仕組みで行われる場合には、先程お話しした偶然性が否定されることになりますから、最早賭博の問題ではなく、接待される側が公務員等であった場合に、贈収賄の罪の成否を検討することになるのではないかと思います。とはいえ、如何に接待であったとしても、その偶然性を完全に排除することは困難でしょうから、やはり「賭博」には該当するということになるでしょう。 次に、「一時の娯楽に供する物」とはどの程度のものなのかについて考えてみます。  「一時の娯楽に供する物」について、最大判昭和4年2月18日は、その場で直ちに費消するような物を意味するものであって、金銭等については、「一時の娯楽に供する物」には該当しないと判断しています。具体的には飲食物等がイメージされているところですが、食事をしながらその飲食物を賭ける場合には犯罪となる一方で、賭け事の後に食事に行き、その食事代を賭ける場合には犯罪となるというのではバランスが悪すぎますから、このような場合の食事代についても、「一時の娯楽に供する物」にあたると判断されています。  しかしながら、その食事代が極めて高額な場合にも、「一時の娯楽に供する物」に該当すると判断した上で、極めて小さい金額を賭けた場合には「賭博」として刑罰を科されるというのもバランスが悪いように思われます。ですから、食事代のような性質であれば、常に「一時の娯楽に供する物」として理解される訳ではありません。  一方で、最判昭和23年10月7日は、金銭を賭けるような場合には、その金額が極めて安いものであっても、「一時の娯楽に供する物」とは評価できないとされています。したがって、この考え方によれば、小さな金額であったとしても、賭け麻雀は常に賭博罪が成立することになる訳です。 賭博に負けた場合、その方は金銭等を失うことになります。しかしながら、ルールに沿って賭け事をしている訳ですから、そのような金銭等を失うことについて承諾しているものと考えられます。ですから、賭博が原因であるという点を取捨すれば、賭博に負けた人は合意の上で金銭等を渡しているにすぎませんから、この賭博に負けた方を保護する必要性はなさそうです。  にもかかわらず、賭博行為に刑罰を科しているのは、賭博が蔓延ることによって、国民の健全な勤労観念等が失われることを防ごうとしているからです。賭け事によって簡単にお金を稼げるとすれば、真面目に働く人が少なくなってしまいますし、賭け事に負けることによって人生が破綻するような方が続出すれば、国にとっても大きな悪影響を及ぼすことになるのです。

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